大学3年生の頃、吉田響は大きな決断を迫られていた。安定した実業団という道を捨て、瀧川コーチと二人三脚でプロランナーとしての道を歩む―その選択だ。「お前がやらないで誰がやるんだ」というコーチの言葉が、迷いを振り切る勇気となった。
プロの世界では、勝てば称賛、しかしすべての結果が自分に跳ね返り、責任と重圧、緊張感も受け止めなければならない。だが、瀧川コーチの指導で強くなりたいという思い、世界で大きく羽ばたきたいという志、さらにトレイルランへの挑戦心――これらが重なり、重圧さえも跳ね返す力となった。
大学4年生を迎える目前、吉田響は誰よりも挑戦を恐れず、プロとしての第一歩を踏み出す覚悟を固めていた。その背中には、夢を追い続けるアスリートの熱い鼓動が確かに刻まれていたのである。
歴史の長い陸上界ではあるが、まだプロスポーツとしてリーグ化など興行としても仕組み化されているわけではなく、プロ選手として活動すること自体が大きなリスクを伴う。それを理解したうえで吉田響はその道を選び、瀧川コーチもまたそのための会社設立という自身の人生を賭けた決断をした。決して簡単ではない選択だからこそ、二人の挑戦には大きな意味があり、我々ファンとしても今後どのような軌跡を描いていくのか、楽しみでならない。
これまでにいない新しいプロマラソンランナー像の姿、そして陸上界全体のプロアスリートの新しい概念・文化の確立に、非常に期待している。
※本記事の一部に誤りがあり、2025年10月8日に訂正しました。ご関係者の皆さま、読者の皆さまにご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。