「初マラソンは、まず完走」。
日本陸上界に長く根づいてきたこの常識を、誰よりも冷静に、そして論理的に疑っていたのが瀧川コーチでした。本インタビューを通じて浮かび上がったのは、挑発的な挑戦ではなく、緻密に積み上げられた必然としての“大阪マラソン”だったと言えるでしょう。
瀧川コーチの言葉の随所には、「結果」よりも「過程」、「期待」よりも「状態」を重んじる、一貫した哲学が貫かれています。距離や年齢で選手を縛らず、数字よりも身体の質と反応を見つめ続ける。その姿勢こそが、吉田響という選手を“駅伝のエース”から、“世界基準のマラソンランナー”へと導いている核心なのだと、取材を通して強く感じました。
また、本インタビューが特別なのは、単なる戦略論や技術論に留まらず、「どう育てるか」「どう信じるか」「どこまで任せるか」という、人と人との関係性そのものが、勝負の設計図として描かれている点にあります。押さえつけず、放任せず。その間で最適な距離感を取り続ける瀧川コーチのマネジメントは、トップアスリート育成の一つの理想形と言っても過言ではありません。
そして何より、このインタビューを貫いているのは、「日本の中で終わらせない」という、揺るぎない視座です。大阪マラソンはゴールではなく、あくまで“起点”。その先に見据えられているのは、海外メジャー、世界のトップ50、そしてロサンゼルスの舞台です。にもかかわらず、その語り口は決して大仰ではなく、日々の練習という足元から、淡々と世界へ向かっていく姿勢が印象的でした。
吉田響選手にとって、瀧川コーチは単なる指導者ではなく、走りと心を内側から支える屈強な背骨のような存在です。その背骨があるからこそ、彼は迷うことなく、目の前の一歩と世界の頂点を同時に見据え続けることができる。その事実こそが、このインタビュー全体を貫く、最も大きなメッセージなのかもしれません。
この42.195kmは、単なる距離ではなく、思想であり、設計であり、未来への弾道です。その第一歩が、大阪の街から踏み出されます。